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ー注文住宅の間取りを成功させる基本と実例:暮らしやすさを最大化する考え方ー

間取りづくりの出発点は「時間の使い方」

良い間取りは、坪数や部屋数の足し算ではなく、家族の一日の動きに寄り添う設計から生まれます。朝の支度、洗濯、帰宅後の片付け、就寝前のリラックス——これらの“時間の連続”を分解して、どこで渋滞が起きるかを想像することが第一歩です。

家族の動線マップを描く

・起床→洗面→着替え→朝食→出発の導線を一直線化
・帰宅→手洗い→荷物置き→着替え→くつろぎの流れを整備
・就寝前のルーティン(入浴→洗濯→物干し→収納)を短距離化

優先順位リストの作成

・「必須/できれば/不要」に分け、面積配分の根拠にする
・将来変化(子の成長・独立、親の同居、在宅勤務)も前提化
・“好き”と“合理”を両立させる比較軸(使い勝手・維持費・採光)

ゾーニング:静と動、清と汚を分ける

次に、家全体を「動(LDK・回遊)」「静(寝室・書斎)」「サービス(水回り・収納)」の三層で整理します。玄関まわりは外の汚れを受け止める“緩衝地帯”、LDKは家族の中心、個室は音と光をコントロールする“静けさの箱”と考えると、配置の指針が明確になります。ここまで整理できると、細部の間取りを検討する際にも迷いが減り、決定スピードが上がります。

玄関・土間の役割

・土間収納+手洗いで持ち込み汚れをブロック
・ベビーカー、スポーツ用品、非常持出品の置き場を確保
・家族動線と来客動線を分けると生活感を隠しやすい

LDKの配置と連携

・キッチン⇔ダイニング⇔パントリーを直結
・リビングは視線の抜け(大開口・吹抜)で面積以上の開放感
・回遊動線やスタディコーナーを“通り道の途中”に

家事がラクになる水回りと収納の黄金比

洗濯・物干し・収納の距離が短いほど、日々の負担は軽くなります。洗面・脱衣を分けるか、屋内干しをどこに置くか、ファミリークロークを廊下へ出すか——これらは暮らしやすさを決める要諦です。設備の豪華さよりも“動線の短さ”が満足度に直結します。

洗濯動線の最適化

・洗う(脱衣所)→干す(ランドリールーム/吹抜・サンルーム)→しまう(FC)を一直線
・ガス衣類乾燥や乾太くん等の選択肢も配管計画から前提化
・室内干しは来客視線から外し、換気経路と日射を設計

収納は“量”より“場所と寸法”

・帰宅動線上にアウター・鞄・鍵・郵便物の定位置
・可動棚ピッチ、ハンガー高さ、奥行き30/45/60cmの使い分け
・季節物は天井高や階段下など“余白の体積”を活用

採光・通風・視線計画で居心地を作る

明るさは窓の大きさより“高さと位置”で決まり、涼しさは風の入口と出口の差圧で生まれます。南だけに頼らず、朝は東、安定光は北、夏の遮蔽は庇や外付ブラインドと組み合わせます。視線の抜けを作ると実面積より広く感じ、プライバシーも確保しやすくなります。

窓の設計のコツ

・腰高窓+ハイサイドライトで目線と明るさを両立
・階段や吹抜で縦方向に光をまわす
・水回りはすりガラスや地窓で視線をコントロール

通風の基本

・対角線上に開口を設け、風の抜け道を可視化
・引違いだけでなく縦すべり/横すべりを使い分け
・網戸の位置、家具配置で風路を塞がない

平屋・二階・三階で変わる間取り戦略

同じ坪数でも、階構成で暮らしやすさは大きく変わります。平屋はフラットな移動が魅力、二階建てはプライバシーの切り分けがしやすく、三階建ては狭小地でも空と光を取り込みやすい特徴があります。敷地条件や周辺環境を踏まえて、最適解を選びましょう。

平屋の間取りポイント

・中庭やコの字で採光・通風・プライバシーを両立
・家事動線が短くバリアフリー適性が高い
・屋根・外壁面積が増えやすいので断熱と日射計画を丁寧に

二階建ての間取りポイント

・1階にLDK+水回り、2階に個室が基本の安定解
・吹抜やスキップで上下の一体感を作る
・階段は中心配置で回遊動線を強化

ワークスペースと多目的空間の賢い組み込み方

在宅時間の増加で、書斎・スタディ・家事カウンターのニーズは高いです。専用室が取れない場合でも“通り道の途中”や“LDKの一角”に半個室を設ければ、音と視線をほどよくコントロールできます。小空間でも換気・配線・収納を先に設計すると使い勝手が格段に上がります。

ワークコーナーの実寸計画

・天板奥行60~70cm、幅120cm以上で資料作業に対応
・背面に可動棚、足元に配線ダクトで散らかり防止
・オンライン会議用に背景壁と調光照明を用意

家族共有スペースの工夫

・スタディカウンターを通路側に向け、親が見守れる配置
・可動間仕切りで客間⇔書斎⇔キッズスペースを兼用
・吸音材やカーテンで音環境を整える

音・ニオイ・視線の“ストレス三兄弟”を抑える

暮らしの不満は面積不足より“生活音・料理の匂い・視線の気まずさ”で生まれがちです。間取り段階で対策を組み込めば、後からの追加工事を減らせます。たとえばトイレ位置はLDKから直接見えない・聞こえないことが基本、キッチンは換気計画とパントリーで匂いを遮断します。

音対策の配置

・寝室と水回りの間に収納や廊下を挟む
・階段吹抜の音漏れを想定し、個室ドアの向きを調整
・子ども室は将来分割前提で開口・照明・スイッチを二系統化

プライバシーと見えがかり

・玄関からLDKが丸見えにならない“曲がり”を設ける
・洗面は来客も使える位置、脱衣は家族専用で分化
・寝室は朝日の入り方と通学・通勤動線の音を考慮

コストと間取りの関係:箱をシンプルに、質を高める

同じ延床でも、凸凹が多いと外皮面積が増え、コストと熱損失が上がります。外形はできるだけシンプルに、内部で“抜け”や“段差”を作って豊かさを演出すると合理的です。造作は要点集中、窓は「数より質」を合言葉にグレードを選びましょう。ここでの判断が光熱費・維持費まで効いてきます。

減額しないほうが良い所

・窓性能(サッシ・ガラス)と断熱・気密
・換気・空調の要となる設備容量と配管ルート
・家事動線を担う収納量と位置

調整しやすい所

・仕上げ材のランク、造作の範囲
・屋外の大物(ウッドデッキ・外構)は後工事へスライド
・照明器具は回路を先に確保し、器具は段階導入

タイプ別・間取りの実例アイデア

数値や理屈だけではイメージしづらいので、典型的な三タイプに分けて“考え方の型”を示します。敷地や家族によって最適解は変わるため、ここから自邸仕様に微調整してください。

30坪・4人家族(2階建て)

・1階:玄関土間→ファミクロ→洗面→LDK回遊。キッチン背面に2列パントリー
・2階:主寝室+WIC、子ども室2室は将来仕切り可、ホールに共有デスク
・ポイント:洗濯動線一直線、リビング階段+吹抜で一体感

26坪・平屋3LDK

・中庭コの字型で採光と通風を確保、回遊の要にランドリールーム
・寝室群は中庭側に面し、音源の水回りを反対側に隔離
・ポイント:将来バリアフリー適性、家事距離の最短化

狭小地・3階建て

・1階:玄関土間+大型SIC、納戸、水回り
・2階:LDK一体+吹抜・ハイサイドライトで明るさ確保
・3階:個室群とバルコニー、洗濯は2階乾燥→3階WIC収納
・ポイント:縦の移動を家事導線に組み込み、エレベータ設置余地を確保

失敗しないための最終チェックリスト

間取りが固まったら、図面上の“理屈”だけでなく、生活の“体感”で再確認しましょう。紙の縮尺や3Dよりも、実寸テープや段ボールで動線を歩くとギャップが見つかります。最後の微修正で、日々の満足度は大きく変わります。

動線・収納

・朝夕のピーク時に家族が交差しないか
・洗濯→物干し→収納の距離は最短か
・帰宅後の物の定位置が玄関から近いか

採光・通風・音

・夏冬の太陽高度で窓の役割が過不足ないか
・対角通風の開口が確保できているか
・寝室と水回りの間に緩衝帯があるか

将来可変・維持管理

・子ども室の将来分割/統合の余地
・点検口や配管経路がメンテしやすいか
・家具・家電の大型化に対応できる搬入動線か

以上の考え方をベースに、家族の“今”と“これから”に合う間取りを選べば、同じ面積でも暮らしの満足度は大きく変わります。図面はゴールではなく、理想の毎日を実現するための道具。数字と体験の両面から磨き込み、納得のプランに仕上げていきましょう。

2025.10.17